医療機関での仕事の一つに医療事務というものがあります。
医療事務は、医療費の計算や患者さんへの対応など、専門性が高く覚えることが多く大変な事務職の一つです。
しかしながら、高齢化に伴い医療分野の需要も高まっていることから医療事務への転職を考えている人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、医療事務の仕事内容をご紹介しながら、やりがいやつらいこと、必要なスキルなどを解説していきます。
目次
医療事務の勤務形態
鈴木
鈴木
主に医療機関で活躍する事務職ですが、その勤務先は大きく分けると「病院」と「診療所」に分けることができます。
病院と定義づけされる施設は、ベッド数が20床以上設置されていることが条件で、総合病院のほか精神科病院や感染症病院もこれに含まれます。
また、ベッド数が19床以下の施設は診療所と定義され、クリニックや医院がこれに該当します。
規模の小さい施設で勤務する場合は、診療科や患者さんの数が多いため、分担制で医療事務を行うことが一般的です。
なお、医療事務の場合、入院施設のある病院や夜間診察を行っているところでは夜勤などもありますが、外来の部署などによっては土日祝日が休みのところもありその形態は様々です。
参考:https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/10-2/kousei-data/PDF/22010206.pdf
医療事務の仕事内容
鈴木
鈴木
医療事務の仕事内容は、大きく分けて下記のようなものが取り上げられます。
- 受付業務
- クラーク業務
- レセプト業務
患者さんへと医療スタッフをつなぐことが医療事務の主な仕事と言えます。
以上3つの業務を順に解説していきます。
受付業務
医療事務の最も代表的な仕事が受付業務です。
主に、来院した患者さんの保険証を預かったり受診科への案内をしたりする仕事内容となっています。
患者さんへの案内だけでなく、カルテ作成や診察券の発行、会計業務もこの受付業務の中に含まれます。
診察終了後は、患者さんに対して会計業務を行って診療費用を受け取ります。
受付業務は患者さんにとって病院の顔です。
黙々と受付をするのではなく、患者さんの不安を取り除いてあげるようにコミュニケーションを取る必要があり、接客業的要素も強い仕事内容です。
クラーク業務
クラーク業務とは、患者さんの食事や点滴など医療行為の管理を行ったり入退院などの手続を秘書として行う業務のことです。
また、クラーク業務には外来や病棟をサポートする「メディカルクラーク」とドクターを支える「ドクターズクラーク」があります。
メディカルクラークは、看護師が働く現場をサポートする仕事です。
受付業務を兼ねていることが多く、患者さんやその家族と接する仕事内容であるので、医療事務のクラーク事務はこちらが一般的です。
一方で、ドクターズクラークとは、ドクターのサポートがメインのクラーク業務で、医師事務作業補助者とも言われています。
診断書などの文書作成補助やカルテなどの診療記録代行入力などが主な仕事内容です。
クラーク業務は、様々な場面で患者さんと医療スタッフの間を取り持つ重要な仕事内容となっています。
レセプト業務
レセプト業務は、医療機関が保険者に請求する医療費の診療報酬明細書の管理を行う仕事です。
患者さんが診療費用を一部支払ったとき、医療機関は健康保険組合や国民健康保険組合などに対し診療医療を請求する必要があります。
そのときに提出を求められるものがレセプト(診療報酬明細書)という書類で、医療事務者はこの書類を作成しなければならないのです。
医療事務の中でも最も確実性と専門性が必要とされる難しい仕事で、資格がなくてもできるものですが、未経験や未資格でこの業務を行う人は少ないです。
従来、レセプトは手書きやMOによる請求が一般的でしたが、2006年度からオンライン請求が可能(※1)になりました。
※1 電子政府の総合窓口 イーガブ「厚生労働省通知(療養の給付、老人医療及び公費負担医療に関する費用の請求に関する省令の一部を改正する省令の施行について)」
医療事務の仕事に必要なスキル
医療事務は診療・薬剤に関することや医療保険制度といった専門知識が求められることに加え、下記のようなスキルが必要になります。
- コミュニケーションスキル
- パソコンスキル
- 作業のスピード性と正確性
- 臨機応変な対応
ここでは、医療事務の仕事に必要なスキルを順に解説していきます。
コミュニケーションスキル
医療事務は院内はもちろん、様々な状況の患者さんと付き合っていける高いコミュニケーションスキルが必要です。
医療事務の仕事は、患者さんの要望を汲み取って適切に回答するだけではありません。
不安で来院した患者さんが安心できるような表情や言葉遣いをしなければならないという難しさがあるのです。
また、言葉遣いだけでなく医療保険制度など、専門的な話も患者さんにわかりやすく伝えられる言葉のボキャブラリーが必要になる仕事でもあります。
その医療機関の評価が上がるかどうかは、医療事務で働く人が来院者に対してどれだけ上手にコミュニケーションが取れるかというところにかかっているのです。
パソコンスキル
医療事務は、事務職としての基本的なパソコンスキルが求められます。
パソコンの一通りの操作ができることはもちろん、患者さんの個人情報やドクターの行った診療内容などを入力することの多い仕事です。
通常の事務はWordやExcelの操作スキルが求められます。
しかし、医療事務の場合は、それ以外にもレセプト作成用のソフトを使いこなせるようにならなければいけないという難しさがあります。
特に、医療機関は近年のIT化によって、診療報酬の算定でレセプトコンピューターを使用することも多くなりました。
そのため、そのスキルの重要性が上がってきているのです。
また、医療事務のパソコンスキルは専門性が強く、他の事務職から転職しても一から覚えることが多いという特徴があります。
作業のスピード性と正確性
医療事務は、あらゆる作業においてスピード性と正確性が求められます。
仕事は、受付から会計業務、レセプト業務など多岐にわたるため、素早くこなしていけない難しさがあるでしょう。
また、書類の提出日が多く、複数の作業を同時に進めていく効率性が重要です。
パソコンスキルでも述べたように、患者さんなどの個人情報などにミスがあってはいけません。
特に、複雑なレセプト業務は間違った内容を入力をしてしまうと、差し戻しなどが発生し再審査が必要になってしまうおそれもあります。
そのため、医療事務の仕事はスピードと正確さが重視される仕事と言えるでしょう。
臨機応変な対応力
医療事務は病院やクリニックで働くため、高齢者や車椅子の方、外国の方など様々な患者さんが訪れます。
そのため、その相手の状況に合わせた臨機応変な対応が求められます。
具体的には、高齢者の方にはゆっくり大きな声で説明する、子供に対しては目線を合わせて優しく話しかけるなどが挙げられるでしょう。
最初に接するのは医療事務従事者なので、患者さんの信頼を得るためにはひとりひとりに寄り添ったホスピタリティが重要となります。
マニュアルに頼らない臨機応変な対応力が、医療事務の仕事では最も求められるスキルなのです。
医療事務のやりがいは?
仕事内容が多く専門性の高い医療事務ですが、仕事ののやりがいは以下のようなものが挙げられるでしょう。
- 多くの人に感謝される
- 医療に関する知識が増える
- 社会貢献の実感がある
ここでは、医療事務のやりがいを3つ解説いたします。
多くの人に感謝される
医療事務の仕事は、患者さんと直接やり取りすることが多いので感謝の言葉をかけてもらうことが多い点でやりがいを感じ人が多いです。
また、医療事務は患者さんと医療スタッフをつなぐ仕事です。
そのため、医師や看護師といった現場で働く人から感謝される場面も少なくありません。
自分の働きが誰かの助けになっているというのを実感できるのが、この医療事務の代表的なやりがいの一つでしょう。
医療に関する知識が増える
医療事務は、仕事を通じて治療行為や検査のほか、医療費や保険のことにも詳しくなります。
初めはわからないことが多くても、医療事務として現場で仕事をこなしていくと徐々に知識が活かせるようになってレベルアップを感じることができるでしょう。
また、修得した知識は日常生活でも役に立つことが多く、医療分野に関しての知識があるというのは友人や家族からも頼りにされるものです。
社会貢献の実感がある
病院やクリニックの縁の下の力持ちとも言える医療事務は、社会貢献度が非常に高い仕事です。
医療事務は、間接的に患者さんを助けることができる仕事で、社会的な貢献を果たしているという充実感があります。
また、社会的な貢献に加えて、医師や看護師の人の職場環境を良くするという点でも働きがいもあるでしょう。
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医療事務のつらさは?
医療事務はやりがいのある反面、以下のようなつらさがあるということも知っておいたほうが良いでしょう。
- 覚えることが多い
- 患者さんへの気遣いに疲弊する
ここでは、医療事務のつらさについて順に解説していきます。
覚えることが多い
医療事務は、仕事内容でも触れたように受付以外にもカルテ管理やクラーク業務など覚えることが非常に多いというつらさがあります。
実務経験や資格があったとしても、医療機関によって取り扱う医療機器や専門用語も異なります。
そのため、同じ医療事務に転職しても仕事先で覚えなおすことも多いでしょう。
また、勤める医療機関の規模によっても大変な部分が違ってきます。
大規模な病院ではレセプト業務などが膨大になりますし、小規模な診療所などは作業が分担ではなく、一連の業務を任されるという大変さがあるでしょう。
患者さんへの気遣いに疲弊する
医療機関には毎日様々な患者さんが訪れるので、相手に合わせた気遣いやコミュニケーションが常に求められる仕事であるというつらさがあります。
ちょっとした言葉の伝え方や言い間違えなどでクレームにつながってしまうこともあるので、その部分では接客業的な難しさのある仕事と言えるでしょう。
また、医療事務は国家資格を持っていなければ診療行為をアドバイスしてはいけないという部分もあるため緊張感があります。
そのため、うかつな発言ができないという点でも気を張って疲れてしまうということもあります。
医療事務の仕事に向いている人
医療事務のやりがいとつらさについて解説しました。
以上のことから、この仕事に向いているのは次のような人だと言えます。
- 人当たりが良く、気配りのできる人
- 几帳面な人
- 数字に強い人
ここでは、この3つの点について順に解説していきます。
人当たりが良く、気配りのできる人
医療事務では、患者さんとのコミュニケーションやスタッフとのチームワークが必須なので、人当たりが良く、気配りのできる人が向いています。
患者さんには、それぞれの状況に合わせて対応しなければならず、マニュアルに頼らない相手の気持ちを察することができる能力が必要です。
特に患者さんへの接し方が大切な医療事務です。
しかし、それだけでなく医療スタッフに対しても仕事でコミュニケーションをとって連携し、細かい気配りなどができる人のほうが良いでしょう。
几帳面な人
医療事務は事務職なので、コミュニケーション能力だけでなくミスなく正確に仕事をこなせる几帳面な人が向いています。
会計業務やレセプト業務は、数字を取り扱うために慎重さが常に求められます。
また、几帳面さのほか、数字に対して苦手意識のない人は医療事務に特に向いていると言えるでしょう。
医療事務は患者さんやドクターに関する個人情報の取り扱いが多く、大雑把な性格だと紛失などのおそれもあります。
数字に強い人
医療事務は会計業務やレセプト業務が多いので、数字に強い人が向いています。
また、それ以外にも薬の投与日数や診療回数など、医療事務では様々な数字を取り扱うという特徴があります。
そのため、数字が苦手であっても務まる仕事ではあるものの、業務に関する一通りの計算はできるようにならなくてはいけないでしょう。
医療事務という仕事において、正しい計算方法でスピード感をもって計算できる人は現場で重宝されます。
医療事務の年収は?
平成28年7月時点の厚生労働省の統計(※2)によると、医療事務の平均年収は296万円で、平均月収は20万前後です。
医療事務の場合、職歴や資格によっても異なりますが、全国の年収に比べてやや低い水準にあります。
医療事務の将来性、なくなる可能性は?
鈴木
鈴木
医療の世界でもAIが発達したことにより、将来は医療事務がなくなってしまうのではないかという声があります。
実際に、作業量の多いレセプト業務などにおいてはAIの導入が各医療機関でも検討されていて、業務の軽減が期待されています。
しかしながら、AIは臨機応変さの求められる受付業務ははまだまだ不得意な分野で、患者さんへの気配りや配慮などは難しいという側面があります。
そのため、今後も医療事務という仕事の需要が尽きる可能性は低いと言えるでしょう。
未経験でも医療事務への転職は可能?
鈴木
鈴木
医療事務に必要な資格は特にありません。
実際に、求人を見てみると未経験歓迎の求人もいくつかあります。
しかし、未経験であっても資格を持った人や専門知識を持った人が優先的に採用される傾向にあります。
そのため、転職のために資格取得を目指すなど事前に準備をしておくことをおすすめします。
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医療事務への転職に強いエージェント
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また、非公開求人などもあるので、未経験で募集している医療事務の案件を見つけられる可能性もあります。
doda
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まとめ
今回は、医療事務の仕事内容に触れながら、やりがいやつらいところなどを解説いたしました。
医療事務は事務職というくくりでありながら、患者さんや医療スタッフとの高いコミュニケーション能力が求められる仕事です。
それに加えて専門知識が必要な難しい仕事であると言えるでしょう。
しかし、それ以上に社会的な貢献度が高く、多くの人から感謝されるやりがいのある仕事であることに間違いありません。
医療事務へ転職を考えている人にとって、今回の記事が参考になれば幸いです。