建築士の仕事や資格についてデータをもとに徹底解説

建築士の資格は難しい、一級建築士にならないと稼げない、転職を考えるうえで建築士は今後も将来性があるのか、など、疑問に思われることも多いのではないでしょうか。

今回は、定量データを中心に、それらの疑問に対して徹底解説します。

建築士とは

鈴木

今、CADオペレーターのアシスタントの仕事をしているのですが、将来的に設計の仕事をしたいと思っています。
できれば建築士の資格をとっておきたいと考えていますが、そもそも建築士とはどんな仕事で、必要な資格はどんな内容なのか、改めて教えていただきたいのですが。

鈴木

実は建築士は法令に基づいて規定されている国家資格で、種類もあります。建築士の仕事は業種によってかなり雰囲気が異なりますね。詳しく解説していきますね。

建築士とは、法令に基づく仕事になります。

また、一口に建築士といっても種類があること、よく混同されやすい違いについても紹介し、解説していきます。

建築士の役割

建築士のおもな仕事は、「建築士法」という法律(※1)にもとづいて、さまざまな建築物の設計工事の監理をすることです。

建築士法の第4章の「業務」に書かれている内容を引用すると、

建築士は、設計を行う場合においては、設計に係る建築物が法令又は条例の定める建築物に関する基準に適合するようにしなければならない。

建築士は、設計を行う場合においては、設計の委託者に対し、設計の内容に関して適切な説明を行うように努めなければならない。

建築士は、工事監理を行う場合において、工事が設計図書のとおりに実施されていないと認めるときは、直ちに、工事施工者に対して、その旨を指摘し、当該工事を設計図書のとおりに実施するよう求め、当該工事施工者がこれに従わないときは、その旨を建築主に報告しなければならない。

建築士は、延べ面積が二千平方メートルを超える建築物の建築設備に係る設計又は工事監理を行う場合においては、建築設備士の意見を聴くよう努めなければならない。ただし、設備設計一級建築士が設計を行う場合には、設計に関しては、この限りでない。

上記のとおり、建築物の設計と、工事監理についての内容となっています。

※1 建築士法

建築士の種類/違い

建築士には、一級建築士/二級建築士/木造建築士があり、それぞれ設計可能は範囲が異なります。

公益財団法人 建築技術教育普及センター(※2)によると、下記のような分類になります。

※2 公益財団法人 建築技術教育普及センター

設計士との違い

建築士とは資格の名称であり、国家資格のことです。

設計士という言葉が使われることがありますが、定義のない呼称となっていて、建築士の資格が無くても名乗ることは可能になります(CADオペレーターやアシスタントも、設計士と言われることがあります)。

建築士の仕事内容

建築物を構想し、設計し、建築し、引き渡すまでの一連の流れにおいて、下記を主に担当します。

設計

顧客の要望をもとにイメージをつくり(ミニチュア模型を作成)、図面の作成(設備設計と構造設計、意匠設計)を行います。

建物の外観・内観だけではなく、快適さ、環境への配慮などを考えて設計していくのが「意匠設計」です。

強度や密度、耐震性など、建物の安全性を考えて設計するのが「構造設計」です。

主に配線・配管・インターネットなどのインフラを設計したり、空調機器の大きさを設計するのが「設備設計」です。

工事監理

「管理」ではなく、「監理」という文字が使われています。

例えば、工事の工程管理ということになれば、実際に作業を行う工務店の人が行い、作業工程や安全管理などを行います。

対して「監理」とは、設計図の通りに工事が行われているかどうかの確認です。

建築士法によると、「工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認すること」となっています。

建築士の1日の業務の流れ

1日の業務内容の例としては、下記のような流れになります。

9:00 業務開始

メールチェックや朝礼、ミーティングをすませます。

9:30-12:00 設計業務

CADというソフトを使った設計業務を行います。

12:00-13:00 お昼休憩

1時間休憩をとって、午後の業務に備えます。

13:00-14:00 工事監理

工事監督者などに対して、設計図面を中心に工事の注意点等の打ち合わせを行います。

15:00-17:00 設計業務

引き続きCADを使って設計業務を行います。

17:00-18:00 明日の準備

各プロジェクトの納期から、明日優先して作業すべき設計などを確認し、必要であれば、顧客に確認するなどを行います。

※設計に関する下記のような情報取得も、業務に入ってきます。

  • 現地調査などを行い、設計に必要な情報を取得して設計。
  • 顧客の要望をヒアリングして、設計に反映。

建築士の業務時間や休日等

一般的に、建築士は残業が多い傾向にあります。その理由として、

  • 労働基準法の専門業務型裁量労働制に該当すること
  • 設計に時間がかかる場合もあること

ということが考えられます。

パーソル総合研究所の2018年の調査(※3)によると、一般職層より、管理職層で建設業の長時間勤務が目立ちます。

職種別でみても建築土木系の専門職種の残業は多い結果となっています。

※3 パーソル総合研究所 業種・職種別残業実態マップ

建築士になるために必要な資格

鈴木

建築士の仕事の内容はイメージがつきました。実際に建築士の資格をとるにはどんな受験資格があって、どのような難易度なのでしょうか?

鈴木

建築士の種類ごとに、必要な学歴が違います。また難易度も異なりますので詳しく説明しますね。

建築士試験の受験においては、学歴の要件があります。また、建築士として登録する要件も決められています。

一級建築士、二級建築士/木造建築士、それぞれに要件が異なります。

一級建築士

以前は、四年制大学の建築学科を卒業してから、2年以上の実務経験を経なければ受験できませんでしたが、

平成30年12月14日に公布された「改正建築士法」により、建築士試験の受験資格の要件となっている実務経験が、

原則として、建築士免許の登録要件に改められ、受験時の要件ではなくなりました(※4)。

大学もしくは高等専門学校、専門学校等で国土交通大臣の指定する建築に関する科目を修了すれば受験可能となります(※5)。

※4 公益財団法人 建築技術教育普及センター 受験資格

※5 公益財団法人 建築技術教育普及センター 一級建築士の受験・免許登録時の必要単位数(学校種類別)

二級建築士/木造建築士

以前は、建築系の学科の高校を卒業している人は、3年以上の実務経験を経なければ受験できませんでしたが、

平成30年12月14日に公布された「改正建築士法」により、建築士試験の受験資格の要件となっている実務経験が、

原則として、建築士免許の登録要件に改められ、受験時の要件ではなくなりました(※6)。

建築系の高校等で国土交通大臣の指定する建築に関する科目を修了すれば受験可能となります(※7)。

※6 公益財団法人 建築技術教育普及センター 二級建築士/木造建築士受験資格

※7 公益財団法人 建築技術教育普及センター 二級建築士の受験・免許登録時の必要単位数(学校種類別)

資格試験の難易度

資格試験の難易度は高く、建築士としてのキャリアを形成していくためには、長期間に亘る勉強が必須といえます。

二級建築士の試験は学科試験、設計製図試験の二段階で行われ、学科試験に合格した人のみが設計製図試験を受けることができる試験です。

双方合わせた合格率は22.2%となっています(※8)。

学科試験の科目は、建築計画・建築法規・建築構造・建築施工になります(※9)。

一級建築士になるにはさらに難易度が高く、二級建築士と同じ二段階選抜で行われる試験の最終合格率は12%程度しかありません(※10)。

※8 公益財団法人 建築技術教育普及センター 二級建築士試験結果データ

※9 公益財団法人 建築技術教育普及センター 二級建築士出題科目等

※10 公益財団法人 建築技術教育普及センター 一級建築士試験結果データ

【関連記事】

建築士の資格とは?令和2年に受験資格が緩和された建築士試験について紹介

建築士の活躍の場

建築士としては、色んな活躍の場があります。参考までに近畿大学 工学部 建築学科の主な就職先(※11)を参照します。

主な就職先の業種は下記となります。

  • 設計事務所
  • ゼネコン
  • ハウスメーカー
  • ディベロッパー
  • 官公庁

※11 近畿大学 工学部 建築学科の主な就職先

【ジャンル別】建築士のやりがい

鈴木

色んな活躍先があることは分かりました。それぞれで業務のイメージが異なりそうですが。

鈴木

同じ建築士でも、設計する対象によって仕事のイメージは変わります。やりがいについて詳しく説明していきます。

建築士の仕事は、何を設計するのか、によって仕事のやりがいが異なります。

ゼネコンの建築士のやりがい

ゼロから作り上げるのがゼネコンの建築士の醍醐味だと思います。

建築物も大型のものが多く、形になるまで多くの時間を費やしますが、その分、努力したことが形となって現れることは、何にも替え難いやりがいでしょう。

設計事務所の建築士のやりがい

個人宅の設計を行う設計事務所の建築士の醍醐味は、お客様の笑顔の実現です。

明るくて風通しのよい、防犯面でセキュリティの高い等、様々な要望をお客さまが、実際に実感したときは、何にも替え難いやりがいとなるでしょう。

ハウスメーカーの建築士のやりがい

設計だけではなく、施工も含めたハウスメーカーの建築士の醍醐味は、「何がほしいか」ではなく「どう暮らしたいのか」という深い価値観をかなえられたときでしょう。

暮らしに密着できるやりがいといえるでしょう。

ディベロッパーの建築士のやりがい

ディベロッパーでは、川上から川下まで携われることが醍醐味となるでしょう。

まず、購入を検討している用地にどんな建物を建てるのがいいのか、その土地にふさわしいプランを考えることから関与していきます。

設計と事業双方の観点から構想できるのがやりがいといえるでしょう。

ゼネコンや設計事務所での仕事は、何をつくるか構想が決定してから依頼されることがほとんどだということを考えると、ディベロッパーならではのやりがいといえるではないでしょうか。

【ジャンル別】建築士の辛い点

鈴木

なるほど。逆に辛いことはどんなことなのでしょう?

鈴木

そうですね。辛い点も見ておく必要があります。こちらも解説していきます。

建築士としての辛い点は、施工にかかわる人、あるいは顧客、そして建築する内容によって異なります。

ゼネコンの建築士の辛い点

設計の次に関わるのはたくさんの施工に関わる人たちです。

彼らがきちんと図面どおり作業できるかは、膨大なコミュニケーションが必要になります。

図面だけでは建築物はできません。

図面や設計図を引き継ぎ、それに基づいて実際に作業する人は色んな人がいて、たくさんの人が関わります。

作業員が理解できる図面に書き換えることも頻繁に発生する可能性があります。

設計事務所の建築士の辛い点

個人顧客の細かな要望と予算や土地の制約条件等、折り合いをつけないといけないところはたくさんあります。

このような要望をかなえていくことが醍醐味ですが、土地や予算との制約条件と折り合いがつかないと、打ち合わせが長期化したりすることもしばしばあります。

ハウスメーカーの建築士の辛い点

個人顧客の細かな要望と予算や土地の制約条件等、折り合いをつけないといけないところはたくさんあります。

このような要望をかなえていくことが醍醐味ですが、土地や予算との制約条件と折り合いがつかないと、打ち合わせが長期化したりすることもしばしばあります。

また、ハウスメーカーなので、自由度が狭い場合もあり、実際にかなえられない要望もあります。

ディベロッパーの建築士の辛い点

ディベロッパーがつくる建築物は、建築物としてはおもしろくない、と思われがちです。言い換えれば、設計としてはおもしろくない、ということになります。

実際に大型の商業施設などの設計は、大きな箱になりがちなところもあります。

建築士の年収

職種別に見れば、年収は高い方になります。

厚生労働省の賃金構造基本統計調査の職種別データ(※12)によれば、

  • 一級建築士:大手だと年収換算で900万位、中小だと年収換算で700万位。
  • 二級建築士/木造建築士のデータは存在しない

ということがわかります。

建築士の年収が高い理由としては、

  • 残業が多いこと
  • 資格手当を支給する企業があること
  • 一級建築士については年齢が高い人が多いこと(1000人以上の企業規模では年齢別で50歳~54歳の人数が一番多く、20代は人数が極端に少ない)

ことが理由として考えられます。

※12 賃金構造基本統計調査 職種別第一表

建築士の将来性

ある資料によると、建築士は高齢化(※13)している傾向にあります。

建築施工関係の仕事の量は、例えばオリンピックの前後とかは特需で増える傾向にあります。

しかし、平常時は老朽化による建て替え需要を起点に考えると、あまり市場全体は成長しないかもしれません。

一方、建築士という仕事の側面で捉えると、建築士の高齢化により、なるべく早く建築士になることで、チャンスがくる可能性があると言えます。

※13 社会資本整備審議会建築分科会基本制度部会 建築士制度の現状と課題

まとめ

建築士とは国家資格であり、建築物に責任を負う立場から、資格の取得の難易度も高い仕事です。

それだけに、一級建築士になると年収が高めになります。

実際の設計や工事の現場では、建築対象ごとに様々な特徴があり、それぞれにやりがいや辛い点も大きく違いがあります。

それぞれの違いの理解を深めておくことをおすすめします。

建築士全体では、高齢化が進んでいる可能性もあるため、できるだけ早いタイミングで建築士の資格をとったり、建築士の資格取得に役立つ仕事や会社に転職することをおすすめします。